三女は、左心低形成症候群(HLHS)という生まれつきの心臓病です。
これまでに4度の手術を受けてきました。
- 両側肺動脈絞扼術
- ノーウッド手術・両方向性グレン手術
- 胸管結紮術(乳び胸手術)
- フォンタン手術(TCPC)
2017年8月17日、機能的修復術である「フォンタン手術(TCPC)」を受けています。
三女の疾患は根治しませんが、これで修復は完了しました。
あれから1年。
2018年8月29日~9月1日、3泊4日の日程で心臓カテーテル検査がありました。
こちらの記事は記録をまとめたものです。
心臓カテーテル検査レポート
心臓カテーテル検査は、心臓や血管に管を入れて圧の測定・採血・造影などを行う検査で、体内に直接異物を挿入して行ういわゆる「侵襲的(生体を傷つける)な」検査の1つです。
心臓カテーテル検査はを目的として行われます。
- 病気の的確な診断及びこれに合併する異常を明らかにすること
- 病態を正確に把握すること
■心臓カテーテル検査・治療説明書より
8月29日(水)入院
心臓カテーテル検査(以降:心カテ)が行われるのは31日(金)ですが、心カテの前にはさまざまな検査を受けておく必要があります。
【この日の検査】
- 身長・体重測定
- 採血
- 採尿
- 心電図
- レントゲン
- 心エコー
- 身長:92.4cm→93.6cm
- 体重:11.6kg→12.3kg
※前回の測定は6月20日(2歳10ヶ月)でのことでした。
インフォームド・コンセント
小児循環器TK先生から、IC(インフォームド・コンセント:治療内容の説明・合意)がありました。
前回は鼠蹊部と鎖骨下からカテーテルを入れましたが、今回は鼠径部のみです。
なぜカテーテルの挿入箇所が変わるのかは、フォンタン手術に向けた術前評価心カテICで説明を受けています。
三女は現在グレン循環です。 正常ならば右心房に繋がる上大静脈が、「両方向性グレン手術」によって肺動脈に直接繋がる形になっています。
下大静脈はそのまま右心房に繋がっていますから、下半身のみチアノーゼが残っている状態です。
つまり、鼠径部(下大静脈)からカテーテルを入れても肺動脈には到達しません。
肺動脈圧(肺に流れやすいかがわかる)を測りにいくためには上大静脈にカテーテルを入れなければいけないんですよね。
いつも通りのリスクの説明、強調されるのは心不全と脳梗塞。
カテーテル(異物)が体に入ることで血栓ができやすく、それが脳に飛んでしまうことがあるんですね。
造影剤に関してはこれまでに副作用が出たことはないので、恐らく大丈夫とのことでした。
今回の検査で調べること
- 静脈圧が低い(高すぎない)こと
- 心拍出量(心臓から送り出される血液量)が多いこと
- 縫合部などでの狭窄の有無
仮に狭窄があれば治療介入が必要かどうか、それはどのタイミングで行うのか。 そういったことも検討する必要が出てきますね。
8月30日(木)
8時半からの腹部エコーのために、前日21時からの絶食がありました。
飲水は「水のみOK」でした。
点滴によって服薬の内容が変わることもあります。
ヘパリン(抗凝固薬)は入っていましたが微量のため、今回は変更なしでした。
【この日の検査】
- 腹部エコー
- 点滴のルート確保
8月31日(金)検査当日
こちらも前日21時からの絶食と、飲水は朝6時まで。
少し早起きして薬も飲まなければいけません。
カテ室こと血管造影室への入室は9時半でした。
1時間半の心カテののち、6時間の安静が必要になります。
前回までは鎮静剤で眠らされていましたが、今回は薬を使うことなくギリギリで安静を保つことができました。
翌日が土曜日ということもあり、請求書は退院前日に発行されました。
次回の定期健診日と退院処方も前日のうちに済ませたので、退院日にすることはありません。
服薬の内容は変わりませんでした。
【この日の検査】
- 心臓カテーテル検査
当日の流れ
- 前日21時:絶食
- 6時:絶飲
- 8時半:浣腸
- 9時:エスクレ(お尻から入れる鎮静薬)
- 9時半:血管造影室入室、少し遅れて9時40分
- 11時15分:終了・心カテ後説明
- 11時55分:病室に到着して絶対安静
- 17時半:本来は6時間のところ、穏やかに過ごせたので5時間半で安静解除
今回も心カテ中~翌朝の圧迫解除まで、オムツはテープタイプを使用しました。
点滴が入っていることで尿量は多いです。
心カテ前に抗生剤をIV(静脈注射)で入れているので、1~2日間は下痢・軟便が続くことがあります。
頻回だと枚数を使うことになります。
5~10枚程度でしょうか。
9月1日(土)退院
朝ごはんの後に鼠径部を圧迫していた装具を解除して、傷の消毒。
朝ごはんの後に点滴を外しました。
一連の検査結果・心カテの評価など
検査結果の説明は、心カテ終了直後に主治医T先生からありました。
聞きそびれた部分に関してはTSU先生にも質問しています。
- BNP:測定値外(5.8pg/ml以下)
- SpO2:95~100(96~97が多かった)
- 静脈圧:9mmHg
- 心拍出量(1分間あたり):2.7リットル
- 心エコーの結果、血液の流れはよく三尖弁逆流はほとんどなくなっている
フォンタン循環での中心静脈圧は、良くて9~10mmHg程度(15mmHg以下が良い) 心拍出量は2リットルを下回ると弱いようで、2.7リットルは現状まったく問題なし。
BNPも基準値内(18.4pg/dl)におさまっています。
まったく問題ありませんでした。
「危惧する部分がなかったので短時間で終わったんですよ」とのことで、1時間半で終了したのは調子が良かったから。
三女の持て余すほどの活発さが、これで証明されました。
「普通の子と同じように子育てをしてください」という言葉が、どれほどありがたいものか。
フォンタン手術の術前評価の時と同じように、三女の状態はフォンタン循環の子どもたちの中でもトップクラスとのことでした。
手術の仕上がりについて
執刀医の技術が大変すばらしい、と何度も口にしていたT先生。
ノーウッド手術の出来ですべてが決まると言ってもいいです、と。
ノーウッド・グレン手術前に難しい言われていた「上行大動脈の細さ」が、今は有利に働いています。
(1年4ヶ月前の術前と変わらず)今も2mm程度の太さしかありませんけど、冠動脈としていい仕事をしていますね。
大動脈と冠動脈との太さに差があると、貯まりができてしまったりして、スムーズに流れていかないんです。
娘さんの今の大動脈は無駄のない太さや形をしているので、流れてきた勢いのままいくのでとてもいい状態です。
もう(大動脈ではなく)冠動脈と言っていいですね。
太さの差もそうですし、段差のようなものがあると年数を重ねるごとにそれが顕著になってくるのだそうです。
そうなると血液の滞留が起こるなど、循環のバランスが崩れる原因となり得ますね。
三女の場合それがない=危惧する部分がない、なんです。
集団保育に関して
「子どもは集団で成長していきます」と、積極的にすすめられています。
前回同様に「できることは制限しないで何でもやらせてください」と念を押されました。
親が「この子は心臓が悪いんです」って、周りとの間に壁や距離を作るようなことをしてはいけません。
普通の子と同じように育ててください。
この点に関しては、本人よりも親の意識改革が大変だと。
ここまで抱えてきた不安を簡単になかったことにできるわけではなく、グッと思いとどまる場面はこの先いくらでも出てきそうです。
- 社会人になって働く
- 妊娠・出産を視野に入れて考えていく
これまでに思ってもみなかった選択肢が増えました。
そのために病気と向き合って、受け入れて、上手に付き合っていく方法を知っていく必要があります。
誰かのせいにしたり、誰かに依存していては、その選択肢を生かすことはできませんよね。
自分自身で考えて生きていく力が大切です。
集団保育の受け入れ先に関しては、保健センターでの発達相談をもとに検討していくことになっているのでそちらを優先します。
T先生からは「幼稚園(保育園)への説明が難しければ、僕に回してくれていいので」と言ってくれたので心強いです。
これまでとこれからのこと
SNSを介して、全国にいる心臓病児(特に左心低形成症候群)の親御さんと交流をしていること。
物凄く元気になれる子は決して多くなく、ありがたさと同時に不安もわいてくること。
全ての手術を終えられたからといって、「もう関係ないわ」と他人事にはできないこと。
けれど反対の立場から見れば「あなたの子どもは元気になったからいいよね」と見られる場合もあること。
これまでにT先生に伝えたことのない思いも、ポツリポツリと話しました。
施設・執刀医(技術)の差がある、これは間違いないそうです。
それで予後が変わってしまうことは残念ながらあるのだと。
そして「治療をせずに看取る」方も、少なくないのだと聞かされました。
とても難しい問題ではありますが、これまでの生活が一変してしまうことを考えたらそれもまたひとつの選択で是非はありません。
もちろん、私たちも同じように考えてきました。
それでもT先生は言いました。
「先の不安はあると思いますが、今元気でいられてチャレンジできる喜びに目を向けて生きてほしい」と。
生まれてきたら、みんなが同じように人生を楽しむ権利がありますから。
大変な思いをしてここまで来たけれど、元気になれる可能性があることを発信していっていいと思いますよ。
「今だから」治療してきてよかったと言い切れます。
3年前には、治療を望んでいたとしても今と同じ気持ちでいられたわけではありません。
長女と次女に背負わせてしまった荷はとても重かったはず。
例え家族でも、小さな子どもに背負わせるのは酷でした。
それも、「今だから」こそ「これでよかったんだ」と言えることです。
ただし正解はわかりませんし、正解などないとも思っています。
ただ1つ決めているのは「笑顔でいられる選択をすること」
T先生の言ってくださった「チャレンジできる喜び」を大切にしていけるよう、これからもモモのサポーターであり続けたいですね。
T先生の「ここまで大変だったよね」というひとことが、私の心をゆるめてくれました。
今後の予定
- 次回外来は12月
- 定期健診は年2回(処方のため3ヶ月ごとの受診は必要)
- 今後の予防接種はかかりつけの小児科でOK
- 次回の心臓カテーテル検査(定期)は就学前
「ここまでくれば、ぼくたちの仕事の半分が終わりました(笑)」
それはとても嬉しくて寂しいひとこと。
三女を助けてくれた、私たちを支えてくれた人たちとの関わりは一生続くものではありません。
それでも私たちは日常へ戻らなければいけません。
三女のチャレンジを後押ししながら、私たちもまた前へ前へと進んでいきます。
決して当たり前ではない奇跡の日々を積み重ねながら、毎日笑って過ごしていけますように。
子どもたちの笑顔のために、母どこまでも頑張ります。